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友好都市のヌワラエリヤ市と宇治市

2023年2月10日

紅茶の町ヌワラエリヤ市とお茶の町宇治市は姉妹都市です。

宇治は平安貴族の別荘地でしたが、ヌワラエリヤはイギリス領セイロンを統治する総督やイギリス人農園主たちの別荘地・保養地として建設された町です。

宇治には宇治川が流れ、かつては巨椋池がありましたが、ヌワラエリヤにはナーヌ・オヤやランボダ・オヤが流れ、グレゴリー湖があります。

本記事では、ヌワラエリヤ市と宇治市の共通点と、宇治茶の観光資源について簡単に紹介します。

宇治市で最初の友好都市「ヌワラエリヤ」

宇治市はヌワラエリヤ市、咸陽市、カムループス市の3市と友好都市の盟約を結んでいますが、一番早かったのが1986年4月12日に提携したヌワラエリヤ市です。

1985年11月にヌワラエリヤ市長が調査団とともに3度目の宇治市訪問をした際に、翌年4月ヌワラエリヤ市において友好都市提携の調印式を行うことに合意。

1986年4月12日、ラジャパクセ市長、マハヴェリ土地開発大臣と池本市長、北村市議会議長間において、友好都市提携盟約書が取り交わされています。

参考)
宇治市:友好都市
一般財団法人自治体国際化協会:自治体間交流

茶園面積が少ないヌワラエリヤ市と宇治市

ヌワラエリヤはセイロンティーの7大生産地の中で最小のエリアで、限られたエリアで茶が生産されています。

参考)

https://spiceup.lk/ceylontea/

一方で、セイロンティーの日本輸入元として最大なのは「キリン 午後の紅茶」を製造するキリンビバレッジですが、キリンビバレッジはヌワラエリヤのペドロ茶園の茶葉を購入していることから、日本には多くのヌワラエリヤ茶が輸入されています。

参考)

ヌワラエリヤで見学できる紅茶工場3選

宇治市も茶園面積はわずか80haほどで、「全国茶サミット」が条件としている「自治体内に概ね100haの茶園面積を有すること」を満たしていません。(宇治市は茶業の本社が多いことなどから、特例でメンバーになっています。)

京都府内における宇治茶の最大生産地は和束町です。

2004年に京都府茶協同組合が商標登録を出願した宇治茶の定義は、「京都府、奈良県、滋賀県、三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上げ加工した緑茶」となっています。

参考)
商標登録証:宇治茶
公益財団法人京都府茶業会議所:宇治茶の歴史と文化
公益財団法人京都府茶業会議所:宇治茶手もみ製茶技術(宇治製法)
宇治市:宇治茶の歴史

茶商と世界遺産の町「宇治市」

宇治市に多いのは茶商・茶問屋です。

1160年創業の通圓、永禄年間(1558年〜1569年)創業の上林春松本店、1832年創業の伊藤久右衛門、1854年創業の中村藤吉本店などが宇治市内にあります。

ヌワラエリヤでは茶葉を使った料理が楽しめるヘリタンスティーファクトがありますが、宇治の茶商のお店では碾茶を使った料理が楽しめます。

中村藤吉本店のランチ

 

福寿園の抹茶

宇治に茶を伝えたのは、インドに2回渡航しようとして実現できなかった明恵だとされていますが、宇治市には西方極楽浄土(インドの方角)を背に立つ平等院があります。

私が宇治を訪れたのは2022年9月下旬ですが、9月中旬にインド仏教の再興に尽力した佐々木秀嶺さんの側近、亀井竜亀さんが平等院を訪れたそうです。

宇治市には、淹茶法(急須などに茶葉を入れて湯を注ぎ、染み出たエキスだけを飲む方法)や釜炒り煎茶を日本に伝えた隠元が開いた黄檗宗大本山の萬福寺もあります。

今回は萬福寺に立ち寄る時間はありませんでしたので、平等院と並ぶもう一つの宇治市の世界遺産「宇治上神社」を訪れました。

宇治には源氏物語ミュージアムもありますが、歴史を巡るにはやはり良いところです。

参考)
入間市博物館:中国から日本へ―3度の伝来・3種類の茶-

日本緑茶発祥の地「宇治田原町」

宇治市から宇治茶の主産地である和束町へは山道を登っていきます。途中、宇治市の隣接市である宇治田原町を通ります。

宇治田原町は、宇治田原郷湯屋谷村(現在の宇治田原町湯屋谷)の永谷宗円が青製煎茶製法を考案し、日本茶の発展に寄与したことから「日本茶発祥の町」を掲げています。

青製煎茶製法が考案されるまでは、色が黒っぽい茶色に製茶されていた茶葉(黒製)だった茶葉が、青製煎茶製法によって現在の緑茶の色(青い緑色)に製茶されるようになります。

宇治田原町に残る永谷宗円の生家には、製茶に使用された焙炉場が現存しています。キャンディ県のルーラコンデラに残る紅茶製法の実験を繰り返したジェームス・テイラーのバンガローみたいなものだなと思います。

永谷宗円の10代目の子孫が永谷園を創業した永谷嘉男です。

永谷宗円が考案した青製煎茶製法で作られた茶葉に着目して、委託販売を行ったのが江戸日本橋の山本山の4代目山本嘉兵衛です。

初代山本嘉兵衛は宇治山本村(現在の宇治市山本)で茶を作っていましたが、江戸で宇治茶を販売することにして、江戸日本橋に店を構えています。

青製煎茶製法を世に広めた4代目嘉兵衛に続く、5代目の嘉兵衛徳潤は狭山茶を発掘して世に広め、6代目の嘉兵衛徳翁は、宇治小倉郷(現在の宇治市小倉)の木下吉左衛門宅にて「玉露」を発明するなど、山本山は日本茶の発展に大きく寄与しています。

また、こうして見ると、現在は栽培面積が少ないとはいえ、宇治市は日本茶の歴史においてはやはり重要な地であったことが分かります。

参考)
宇治田原町:日本緑茶発祥の地
宇治田原町観光サイト:緑茶が生まれたおもてなしの町

宇治茶の主産地「和束町」

宇治市から宇治田原町に入ると、山を一度下りますが、和束町に向かって、もう一度山を登っていきます。

和束町への山道は細く、登っていくと途中から茶畑が見えてきます。

山道を登って行って茶畑が見えるというのは、キャンディからヌワラエリヤに向かっている途中に茶畑が見えてくるときのようでもあり、気分が高まりました。

日本の茶園は、機械で刈り取った形になっていて、スリランカの茶園とは見た目が異なりますが、茶畑が並んでいる光景はどちらも絶景です。

和束町でも碾茶を使った料理が楽しめます。

日本遺産第1号「日本茶800年の歴史散歩」

茶商の町「宇治市」、日本緑茶発祥の地「宇治田原町」、宇治茶の主産地「和束町」とそれぞれに魅力がありますが、宇治茶の生産と歴史に関する山城地域は日本遺産第1号「日本茶800年の歴史散歩」として登録されています。

スリランカもヌワラエリヤと限定せずにスリランカの紅茶産地とすると、世界文化遺産のキャンディやゴール、世界自然遺産のナックルズ森林山脈、スリーパーダ、ホートンプレインズ国立公園、シンハラージャ森林保護区、リトルイングランドと呼ばれるヌワラエリヤ、スリランカでの紅茶栽培を成功させたジェームステイラーのバンガロー、世界に紅茶を広めたトーマス・リプトンの展望台、一大観光地となったエッラなど、楽しめるものがたくさんあります。

スリランカには茶園主のバンガローを改装した高級ブティックホテルや、紅茶工場を改装したホテル、茶園の中に泊まれるグランピングやオーガニック茶園に泊まるラグジュアリーステイ、茶園の山に作った高級ホテル・ハイキングコース・アドベンチャー施設・プールバーなど、宿泊地・旅行滞在先としての魅力作りは進んでいます。

スリランカでの先進事例は山城地域の観光化を進めるのに良いヒントになるように思います。

一方で、セイロンティー、ヌワラエリヤ茶のブランディングやマーケティングにおいて、宇治茶から学べることは多いように思います。

両都市の交流が一層活発になるとともに、お茶や歴史、お茶を育む豊かな自然を求めて、両都市を訪れる人が増えることを願います。

参考)
日本遺産ポータルサイト:日本茶800年の歴史散歩
宇治茶の文化的景観を世界遺産に:構成資産マップ

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