絵画で知られるガンポラのガダラデニヤ寺院
ガンポラ時代を代表する3つの寺院は、キャンディの西方にあることから「西方三寺」とも言われます。
エンベッケ寺院が木彫りの寺、
ランカティラカ寺院が石彫の寺、
ガダラデニヤ寺院は絵画の寺と呼ばれます。
この3つの寺院は南インドの影響が強く、仏像とともにヒンドゥー教の神々が祀られた神仏習合であるのが特徴です。
その中でもガダラデニヤ寺院は、北インド様式のシカーラを持つ本堂、本堂の扉の絵、そして、4つの小ストゥーパと中央のストゥーパからなる「ビジャヨートパヤ」が有名です。
本記事では、ガダラデニヤ寺院について紹介します。
目次
ガダラデニヤ寺院とは?
ガダラデニヤ寺院(Gadaladeniya Viharaya)は、シンハラ語の発音に合わせると、ガダラーデニヤ・ウィハーラヤと言います。
※本記事では地球の歩き方の記載に合わせてガダラデニヤ寺院と記載していますが、シンハラ語ではガダラーと長音になっています。
ガダラーデニヤ寺院は、ガンポラに王国を遷都したブワネカバーフ4世(在位:1344/5 – 1353/4年)の治世の始まり、1344年に創建されたと境内に残る碑文に刻まれているそうです。
南インドのドラヴィダ建築様式のお寺で、スリランカでは珍しく全体が切石でできています。
切石のドラヴィダ建築様式のお寺と言えば、スリランカではこのガダラーデニヤ寺院と、ダンブッラとマータレーの間にあるヒンドゥー寺院のナーランダ・ゲディゲです。
ちなみに、ブワネカバーフ4世の治世と同じ時代に建てられたガダラーデニヤ寺院は、ガダラーデニヤ寺院から南4-5キロと近くにあります。
ガダラーデニヤの名は、ガダラーデニヤ寺院がある村の名前ガダラーデニヤが由来です。
ガダラーの意味は分かりませんが、デニヤは「谷」という意味です。
創建したのは、仏教僧「シラヴァンサ・ダルマキルティ・サンハーナヤカ」で、当時は「ダルマキルティ・ヴィハーラヤ」と呼ばれたと、菩提樹の近くに柵で囲まれた石碑の碑文に刻まれているそうです。

また、仏教年代記「ニカーヤ・サングラハヤ」には、寺院名は「サッダルマティラケ」と書かれているそうです。
サッダルマティラケの名は、コッテ王国時代の宗教大要「サッダルマランカラヤ」に関連する名前だそうです。
菩提樹近くにある碑文には、この寺院は南インド出身の建築家ガネスワラチャリによって、ヒンドゥー教様式で設計されたと刻まれているそうです。
ガンポラからコーッテーに都が移り、ガンポラの寺院群は廃寺となります。
キャンディ王国ディナジャラ朝最後の王シュリー・ウィーラ・パラークラマ・ナレーンドゥ・シンハ(在位1707-1739年)は、ガドゥガンナーワに暮らしていた仏僧ウェリウィタ・スリ・サラナンカラ・セロにガダラーデニヤ寺院を寄進。
ウェリウィタ・スリ・サラナンカラ・セロはその後、キャンディ王国ナーヤッカル朝初代の王シュリー・ウィジャヤ・ラージャシンハの教育係にもなっています。
2つの参道
ガダラーデニヤ寺院は、ランカティラカ寺院のように道路で作れた参道「ガダラーデニヤ・テンプル・ロード」と、岩山に造れた階段から本殿に向かう2つの参道があります。
石山の造れた階段は、ガダラーデニヤ・ロードからアプローチすることができます。

本殿「パティマグハラ」
ヴィジャヤナガル様式の柱彫刻

本殿入口の左右に、ライオンの彫刻が施されたヴィジャヤナガル様式の二重柱があります。
外側の柱が屋根を支え、内側の柱は装飾として作られています。
この本来の柱の内側に、装飾用の柱が取り付けられているのがヴィジャヤナガル様式と言われます。
写真を撮り損ねましたが、柱の根元の方にある、匍匐茎で縁取られた願いを叶えると言われる「カルパラタ」だそうです。
この柱で作られた本殿入口前のテラスもヴィジャヤナガラ様式の特徴と言われています。
扉の絵
チケット売り場で入場料を払った際に、係の人に「本殿の扉の絵が素晴らしいので、それをよく見てください。」と言われました。
言われなければ、扉を見ずに本殿の中に入ってしまいますが、しっかり見たのですが、なぜか写真がありません。。。(泣)再訪した際にアップデートしたいと思います。
扉絵は太陽、月、天女「緊那羅(きんなら)」、女性の姿をした花などが描かれています。
緊那羅(きんなら)は、下半身が鳥で上半身が人間の音楽を奏でる天女です。
ガダラーデニヤ寺院の周囲には真鍮の工芸品店が何軒かありますが、最も多く作られているのが、この扉絵の女性の姿をした花です。
参考)
ウィキペディア:緊那羅
本尊
こちらも写真がありません(泣)
ディーマ・ムドラと呼ばれる瞑想の手印(印相)をした仏坐像が安置されています。
ランカティラカ寺院の本尊と同様に仏像の衣にひだがあります。
これはキャンディ時代に作られたもので、ガンポラ時代の仏像の衣はひだがないものだったそうです。
仏坐像の台座(アーサナ)は、「マル・アーサナ」と呼ばれる供花を置く場所にも台座です。。
このマル・アーサナは、キャンディ時代に作られたものです。
仏坐像の上にマカラのトラーナがあります。
その左右にはヤマ、サントゥシタ、ブラフマー、サマン、ナータ、マイトレヤなどの神々の像があります。
ランカティラカ寺院のように、大乗仏教、ヒンドゥー教も取り入れたものになっています。
これはガンポラ王国が弱く、各宗教の権威を必要として、また、各宗教の人々を統治していたことを表しています。
4体の仏立像はガンポラ時代のものではなく、キャンディ時代のものだとされています。
ミニストゥーパ
本殿内部の左側に、小さな仏塔が納められた棚があります。
この棚の扉には仏陀の二大弟子であった舎利弗と目連が描かれています。
これはキャンディ時代に作られたものです。
南インド様式の石屋根と北インド様式のシカーラ

ランカティラカ寺院と同様に、ガダラーデニヤ寺院の屋根は南インド様式の石屋根で造られています。
ランカティラカ寺院はキャンディ時代に木の屋根に造り替えられていますが、ガダラーデニヤ寺院の屋根は石造りのままで、雨漏りしてしまうため、屋根が備え付けられています。
ガダラーデニヤ寺院の本殿は、北インド様式と言われるシークハラが屋根の上にあるのも特徴とされています。
シークハラのお堂には仏像が安置されていましたが、ポルトガル人によって破壊されてしまったそうです。
ウプルワン(ヴィシュヌ)の神殿と太鼓堂
ランカティラカ寺院にも安置されているウプルワンを祀る神殿が、シークハラのお堂に隣接した北側にあります。
元々はヴァルナ神を安置していたものが、後にウプルワン神に変わったと考えられています。
ウプルワン神殿の前には、木造の太鼓堂があり、ここで太鼓の演奏や僧侶の集会などが行われていました。
仏塔堂「ウィジャヨートゥパーヤ」

ウィジャヨートゥパーヤ、あるいはウィヤンタ・プラサーダと呼ばれる4つの仏塔に囲まれ、4本の柱で支えられた屋根の下に安置された仏塔があるお堂があります。
ウィジャヨートゥパーヤ、あるいはウィヤンタ・プラサーダと呼ばれるものがポロンナルワにもあり、有料遺跡エリアの前半のハイライトであるパラークラマバーフ1世の宮殿もウィジャヨートゥパーヤ、あるいはウィヤンタ・プラサーダと呼ばれます。
ウィヤンタ・プラサーダは、インドラ神(帝釈天)が住む忉利天の善見城を意味します。
ガダラーデニヤのウィジャヨートゥパーヤを建設したのは、ガンポラ王国を建国したブワネカバーフ4世の弟パラークラマバーフ5世です。
4つの小さな仏塔の下は仏堂になっていて、それぞれ仏像が一体ずつ安置されています。


ミャンマーに寺院では、4方角に仏像を配置しているものが見られ、ガンポラ時代にミャンマーの仏僧と交流していたことを物語るものだとされています。
元々はスリランカの4方角の守護神を安置したものだと考えられています。
北の守護神がウルプワン
南の守護神がカタラガマ
西の守護神がヴィヴィシャーナー
東の守護神がサマン
参考)
LANKA EXCURSIONS HOLIDAYS:Gadaladeniya temple – Sri Lanka’s best Gampola-period paintings
Amazing Lanka:Gadaladeniya Rajamaha Viharaya – ගඩලාදෙනිය රජමහා විහාරය
Lankapura:Gadaladeniya Vhara
Tours Lanka:Gadaladeniya – The Temple Of Many Names
Wikipedia:Gadaladeniya Vihara
>関連記事
SPICE UP LANKA CORPORATION (PVT) LTD Managing Director
SPICE UP TRAVELS (PVT) LTD Managing Director
「旅と町歩き」を仕事にしようとスリランカに移住。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年4月、法政大学社会学部社会学科を卒業後、六本木の人材系ネットベンチャーに新卒入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長を経てネットベンチャーを退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当しながら、新宿ゴールデン街で訪日外国人向けバーテンダー。
2016年7月、スリランカに初めて渡航し、法人設立の準備を開始。
2017年1月、SPICE UP LANKA CORPORATION (PVT) LTDを登記。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年2月、スリランカ観光情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」オープン。
2020年8月、ニュースレターの配信を開始。
2020年10月、WAOJEコロンボ支部立ち上げ初代支部長に就任。
2023年2月、スリランカ日本人会理事・広報部長に就任。
2025年6月、SPICE UP TRAVELS (PVT) LTDを登記。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
# 関連キーワード
新着記事
-
スリランカのサイクロン影響と最新状況|観光・鉄道【12月4日・随時更新...
スリランカを襲ったサイクロンにより発生した洪水・地滑りで、犠牲になられた方々に哀悼の誠を捧げるとともに、御遺族に対し謹んでお悔やみを申し上げます。被害に遭われた方々の早期の御快復をお祈りし、心よりお見舞い申し上げます。 …
2025年12月01日 -
スパイスアップスリランカ【デジタル版】|vol.19 アルガムベイ特集
目次1 スリランカ唯一の日本語情報誌『スパイスアップ・スリランカ』デジタル版を公開!2 2025年10月発行 vol.19「アジア屈指のサーフスポット 東海岸アルガムベイ」特集号2.1 vol.19目次3 vol.19デ…
2025年11月20日 -
ウナワトゥナのブティックホテル「Sergeant House」|ゴール...
スリランカ南海岸・ウナワトゥナのブティックホテル「Sergeant House(サージェント ハウス)」は、19世紀の邸宅を改装したプライベートな隠れ家。風の通るテラス、緑に包まれたプール、そしてわずか5室の上質な客室が…
2025年11月03日
