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シンハラ中世彫刻の傑作・キャンディ建築の代表とされるエンベッカ寺院

2022年2月22日

ガンポラ王国の代表的な遺跡であり、ユネスコから貴重な木製彫刻であると認められたシンハラ中世彫刻の傑作が見られるエンベッカ寺院について紹介します。

エンベッカ寺院とは?

エンベッカ寺院は、ガンポラ王国の遺跡が点在するウドゥヌワラにある、14世紀に建設された寺院です。

柱の彫刻「ペーカダ(පේකඩ)」の代表例であり、
屋根を支える建築技法「マドル・クルパーワ(මඩොල් කුරුපාව)」の代表例としても取り上げられる、中世シンハラ王朝の建築と彫刻を今に伝える貴重な寺院です。

シンハラ語では、エンベッカ・デーワーラヤ(ඇම්බැක්ක දේවාලය)、あるいはエンベッケー・デーワーラヤ(ඇම්බැක්කේ දේවාලය)と呼ばれています。

デーワーラヤとは、ヒンドゥー教の神々を祀る祠の呼称です。
スリランカの聖地カタラガマに祀られている「カタラガマ」と、この土地の神である「デワタ・バンダラ」が祀られています。

ガンポラ王国の3代目の王ウィクラマバーフ3世(在位1357〜1374年)の時代に建設され、当時は3階建ての寺院だったとも伝えられています。

キャンディ時代に現在の形に改装されたと考えられています。

皮膚病の太鼓叩きと王妃が見た夢のお告げ

エンベッカ寺院は、主に3つの施設で構成されています。

1つ目がカタラガマ神とデワタ・バンダラ神が祀られている「ガラガー・サンクタム」。
2つ目が王妃ヘナカンダ・ビソ・バンダラを象徴する「踊りの間」。
3つ目が太鼓叩きを象徴する「太鼓の間」。

この3つの施設が造られたことを伝える伝承が残されています。

エンベッカ寺院近くの村「ランガマ(Rangama)」に住んでいた太鼓叩きは皮膚病に悩まされていました。
ところが、スリランカ南部のカタラガマに行き、カタラガマ神に祈願したところ、皮膚病が治ります。

太鼓叩きはカタラガマ神に感謝し、毎年カタラガマに行き、太鼓の演奏を捧げました。
年老いた太鼓叩きは、遠方のカタラガマまで来るのは今回が最後になるかもしれないとカタラガマ神に告げます。

すると、「自分の村に寺院を建立して、そこにお参りするように」とカタラガマ神からお告げがありました。

同じくして、時の王ウィクラマバーフ3世の妃「ヘナカンダ・ビソ・バンダラ」は夢で、カタラガマ神から寺院を建てるようお告げを得ます。

ある日、村人が草を刈っていると、切れたカドゥルの木から通常の白い乳液ではなく、血のような赤い液体が出てきました。

※カドゥルの和名はミフクラギ(目脹ら木)といい、その白い乳液は毒性があるため、目に付くと腫れることからその名が付いたとされています。ジェフリーバワの別荘地ルヌガンガにもカドゥルの木があり、ガーデンツアーでガイドさんが毒のある木だと説明してくれます。

この知らせを聞いて人々が集まり、太鼓叩きも様子を見にいき、カタラガマ神からの「寺院を建てよ!」というお告げは、この場所に建てよということではないか?と太鼓叩きは考えます。

そこで、ガンポラ王国の王・ウィクラマバーフ3世にカタラガマ神のお告げの話を伝えにいきます。

王妃から「カタラガマ神から寺院建設のお告げを受けた」と聞かされていた王は、太鼓叩きの報告に驚くとともに、寺院の建設を決定します。

そうして、建設されたのがエンベッカ寺院だと言われています。

キャンディ建築のペーカダとは?

エンベッカ寺院の見どころの一つが太鼓の間にある「ペーカダ」です。

ガンポラ王国時代に始まった建築技法で、広く用いられるようになったのはキャンディ王国時代だとされています。

ペーカダーは、柱の上部に取り付けられ、梁と接しています。

ペーカダがあることによって、柱と梁の安定性が向上し、屋根の重さを柱から地面に伝える役割があるそうです。

太鼓の間には34本の柱があり、各柱に2パターンの蓮の彫刻が2組ずつ取り付けられていて、各柱のデザインは全て異なるため、全部64パターンの彫刻が見られます。

参考)
Wikipedia:Pekada

柱の彫刻

もう一つの見どころは柱の彫刻です。

ペーカダーは柱の上部にあり、上を見上げるように見ますが、彫刻は目の高さにあります。

32本の柱の各4面に違う異なる彫刻が彫られていて、全部で128の彫刻が見られます。

上の写真はガルダ(ヴィシュヌの乗り物)の彫刻です。

スリランカ伝統武道「アンガンポラ」の彫刻や、スリランカの国旗に描かれているライオンに似た彫刻があるのも興味深いです。

神々を祀る寺院でバシャバシャ写真を撮ってるものではないかもしれないと、訪問時(2018年7月)はあまり撮影しなかったため、他の彫刻については、以下のサイトを参照ください。

カメラ禁止の表示はありませんので気にせず撮影して問題ないかと思います。

参考)
Amazing Lanka:Embekke Devalaya – ඇම්බැක්කේ දේවාලය
Wikipedia:Embekka Devalaya

キャンディ建築のマドル・クルパーワ

26本の垂木をまとめている「マドル・クルパーワ」は、スリランカ中世建築、キャンディ建築の代表的な技法で、その代表例がエンベッカ寺院の太鼓の間の屋根で見られるそうです。

訪問時は不勉強で、見損ねてしまいました。。。

また、太鼓の間には非常に多くの彫刻があります。

行かれる際は、ぜひ見逃さずに見てください。

以下、参考にしたサイトをご覧ください。

参考)
Wikipedia:Madol Kurupawa
オールアバウト:垂木(たるき)とは?その役割や基本の寸法と活かし方

総数514にも及ぶ彫刻

前述したペーカダーに彫刻が64個、
柱の横に128個の彫刻があります。

さらに、柱の下段に花模様(リヤパス)の彫刻が256個、
梁に彫刻が30個、
横木にも彫刻が36個、

合計で514個の彫刻があります。

この彫刻をユネスコは高く評価したようです。

奈良になる公益財団法人ユネスコ・アジア文化センターは、2013年にエンベッカ寺院で数日間に渡るワークショップを開催したようです。

カタラガマ神が祀られた「ガラガー・サンクタム」

太鼓の間の奥から、カタラガマ神が祀られている御堂「ガラガー・サンクタム」に入ることができます。

建物の中に、孔雀に乗ったカタラガマ神が見えます。

カタラガマ神像は、カドゥルの木の幹を切り取って造れたと伝えられています。

王妃「ヘナカンダ・ビソ・バンダラ」はその死後に、カタラガマ神より寺院の守護神とされ、「デワタ・バンダラ神」になったとされています。

神仏習合を象徴する菩提樹と仏像

エンベッカ寺院は、日本が神仏習合だったように、スリランカもヒンドゥー教と仏教が習合していたことをよく表す好事例だとも言われています。

上の写真は境内にある菩提樹と仏像です。

また、エンベッカ寺院には、ウィクラマバーフ3世が奉納した象牙や、キャンディ王国の王・ラージャシンハ2世がオランダ東インド会社が贈られた輿が奉納されているそうです。

エンベッカ寺院は入場料とは別に小さなパンフレットを販売しています。
ガラダーデニヤ寺院、ランカティラカ寺院では販売されていませんので、エンベッカ寺院に特徴的だと思います。

エンベッカ・アンバラマ

エンベッカ寺院のすぐ近くには、彫刻が施された石柱が残る「エンベッカ・アンバラマ」があります。

アンバラマはスリランカ各地に残されている巡礼者・商人・旅人のための休憩所です。

エンベッカ・アンバラマは主に王や側室が利用したそうです。

かつては木製の屋根が取り付けられていたそうですが、現在は石柱だけが残っています。

私は寺院だけを見て、訪れませんでしたが、せっかく行かれた方は是非、訪問されてください。

他にもアンバラマが周囲に残されていますので、見比べてるのも面白いでしょう。

エンベッカ寺院への行き方

エンベッカ寺院は、ペーラーデニヤ駅から南西に8キロ、ガンポラ駅から北に10キロの距離にあります。

駅から離れていることと、ガンポラ時代の主な遺跡である「エンベッカ寺院」、「ランカティラカ寺院」、「ガラダーデニヤ寺院」はそれぞれ離れていますので、車かトゥクトゥクをチャーターして周遊するのが良いでしょう。

ガンポラ郊外のマハウェリ川沿いのホテル「Kandy Cabana Eco Resort」に取材で泊まり、ホテルからトゥクトゥクで寺院巡りをしました。

川沿いのこのホテルは、客室が独立したキャバナで、景色もよく良いホテルでした。

私は今度行くときは、ジェフリーバワ後期のパートナーで、ジェフリーバワ財団の代表である建築のチャンナ・ダスワッタさんの自宅のゲストハウス「Hiyarapitiya House」に泊まりに行きたいと思っています。

以下にガンポラの主な観光地の地図を貼り付けましたので、せっかく行かれる場合は、周囲のスポットも是非楽しんでいただけたらと思います。

参考)
Sri Lanka View : Embekke Temple
toursLanka:Embekka Devalaya – Temple of Wood Carvings
ウィキペディア:ミフクラギ属
<ミフクラギ(目脹ら木)> 乳液に毒性、目に付くと腫れることに由来!
The Workshop 2013 for Protection of Cultural Heritage in Kandy, Sri Lanka 21-26 October 2013
公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター

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