マーティン・ウィクラマシンハの著作「変わりゆく村」をわかりやすく解説!
シンハラ文学を代表するスリランカの作家マーティン・ウィクラマシンハの小説で、映画化されてインド国際映画賞で金孔雀賞(最優秀賞)を受賞した『変わりゆく村』について紹介します。
あらすじや登場人物についてだけではなく、作中に出てくる観光スポットについても紹介するので、ぜひ確認してくださいね。
目次
『変わりゆく村』の作者マーティン・ウィクラマシンハとは?
簡単に、マーティン・ウィクラマシンハの経歴について、簡単に紹介します。
マーティン・ウィクラマシンハは、現代シンハラ文学において著名な作家です。マーティン・ウィクラマシンハの作品は、映画化されたりや海外で翻訳本が出版されたりしているなど国内外での評価の高い人物です。さらに、複数の大学から文学博士号をもらっている作家でもあります。
簡単な経歴
1890年 | コッガラ村(『変わりゆく村』の舞台)で長男として生まれる |
1944年 | 『変わりゆく村』を執筆 |
1957年 | 『ウィガーヤ』(蓮の道)がドン・ペーリック賞を受賞 |
1974年 | スリランカ大統領賞を受賞 |
『変わりゆく村』の概要
小説の舞台はコッガラというスリランカ南部の村です。コッガラ村は、著者であるマーティン・ウィクラマシンハの故郷でもあります。低カーストの先祖がいる家庭教師ピエルと生徒でピエルよりもカーストの家系に生まれた娘のナンダーが物語の中心人物です。年代は、20世紀前半でスリランカはイギリスの植民地となっており、伝統文化や経済構造に変化が生じている時代です。
カーストについて、あまり詳しく知らない方は、こちらの記事でスリランカのカーストについて説明しているので、参考にしてみてください。
また、20世紀前半のスリランカの具体的なイメージが湧かない場合は、Youtubeにドラマがアップロードされているので、映像を簡単に確認してみてから読んでみるのもおすすめです。ちなみに、Youtubeのタイトルの『Gamperaliya』は、本のタイトルのシンハラ語であるගම්පෙරළියをローマナイズした単語で、本の題名の「変わりゆく村」の意味しています。
https://youtu.be/IelC9dX3WOY
さらに、amazonで原本(シンハラ語)も購入できるようだったので、語学の勉強をしたい方にもおすすめの小説となっています。
https://www.amazon.com/dp/955841543X/ref=bseries_primary_1_955841543X/131-9185588-5917509
日本語訳版の小説は全国大きめの図書館で、借りられるところが多いので、チェックしてみてくださいね。
『変わりゆく村』のあらすじ
前半と後半のそれぞれ8章についてピヤルとナンダーの関係を中心に簡単にまとめたので、あらすじを確認してみてください。
第1章から第8章のまとめ
家庭教師ピヤルは生徒のナンダーに愛を伝えるが、ナンダーの母親であるハーミネーがピヤルのカーストを気にしていることを理由に返事を濁す。ピヤルとナンダーの噂を聞いたハーミネーはピヤルとナンダーの付き合いに反対する。結果、ピヤルは村を離れ、ナンダーはカーストが比較的高いジナダーサとお見合いをしに結婚をする。その後、ナンダーは出産する。
第9章から第16章のまとめ
ナンダーの産んだ赤ちゃんが亡くなる。ナンダーの夫のジナダーサは貧しくなってきたため、シンハレーに商売をすることを決める。ピヤルと交流する中で、ナンダーがピヤルに対する自分の気持ちを自覚する。その後、ジナダーサが亡くなったという知らせが届き、ピヤルと結婚した。しかし、後に以前のジナダーサの死亡の知らせが偽の情報であったことが本物のジナダーサの死体の発見によりわかり、ナンダーは前夫が亡くなる前にピヤルと結婚してしまっていたことが発覚する。
ナンダーとピヤルの関係以外にも、ムハンディラム家の困窮、都会でのティッサの生活、寺院への参詣、カーストへの考え方など様々な話が盛り込まれています。
変わりゆく村の登場人物と序盤の関係図
ムハンディラム家の関係者
ナンダー・・ムハンディラム家の次女
アヌラー・・ムハンディラム家の長女
ティッサ・・ムハンディラム家の長男
ムハンディラム・・アヌラー、ナンダー、ティッサの父親
ハーミネー・・ムハンディラムの妻
サーダー・・ムハンディラムの年長の使用人
カローリス・・ムハンディラムに小さい頃から育てられた使用人
村人
ピヤル・・ピヤル、アヌラーの英語の先生
カッティリナー・・ムハンディラムからお金を借りている村人
ライサー・・カッティリナーの娘
プンチ・アップ・・カッティリナーの夫
ナンディヤス・・官吏の一人
バラダーサ・・ティッサの友達
ウィジャヤ・・ティッサに結婚式の付添人を頼んだ友人
その他の登場人物
ジェーミナス・・ナンダーの結婚相手を探してもらっている仲介人
ジナダーサ・・ナンダーの見合い相手
ウィーラシリ・・ナンダーの出産時の医者
グナワルダナ・・ゴールの医者
『変わりゆく村』の舞台コッガラの観光スポット
マーティン・ウィクラマシンハ民芸博物館
マーティン・ウィクラマシンハ民芸博物館(Martin Wickramasinghe House & Folk Museum)は、1981 年にオープンした博物館です。博物館には、仏教、農業、漁業、宗教儀式などの遺産が展示されており、スリランカの文化を知ることができます。
ストルトフィッシング
小説の舞台となっているコッガラは、棒に座って行うスリランカ独特の魚の釣り「ストルトフィッシング」の様子が見られることで知られています。
ストルトフィッシングは観光客から写真の撮影料をとっています。
映る人数で料金が変わりますので、撮影をしたい場合はしっかりと料金を確認してから撮影を行ってください。
こっそり撮ると問題になる場合があります。
暑い日中よりも、朝や夕方に見られることが多く、また南西海岸のシーズンである11月〜3月頃によく見られます。
上の写真は漁師さんがいない状態で撮影したものです。
また、ゴールに向かう鉄道で「ウミガメやストルトフィッシングが見えるところに連れて行ってあげる」と声をかけられるがありますが、最後に高額な金額を請求されるので、知らない人の誘いには乗らずに、自力で訪れるようにしてください。
移動手段が握られていて、自分が今どこにいるのか把握できていないと弱い立場になってしまい、交渉しても結局高い金額を支払うことになります。
スリランカで見られる動物などについては、以下の記事を参照ください。
小説の舞台となった島「Madol Doova」
マーティン・ウィクラマシンハの代表作の一つ「Madol Doova」の作品の舞台である川に浮かぶ島「Madol Doova」に船で渡ることができます。
上の写真の橋をぐぐり抜けると、下の写真にある島「Madol Doova」が見えてきます。
ボートではシナモンを加工・販売している島に立ち寄ったりします。
ボートサファリは、ベントタ川、バラピティヤのマドゥ川で行われているものよりも短く、見所も少ないですので、小説の舞台となった島に行ってみたい場合でなければ、他の川でボートサファリした方が楽しめます。
Handunugoda Tea Estate
海が見える低地にありながら、品質の高い紅茶を栽培し、書籍も出しているヨーロッパからの観光客に知られた茶園です。
日本のガイドブックには紹介されていることは少ないですが、ロンリープラネットには別枠で茶園について説明されています。
この茶園にはまだ訪問していませんので、いずれしっかりとご紹介したいと思います。
コッガラのリゾートホテル
コッガラには評判の良いリゾートがいくつかあります。
1)The Fortress
ゴールロード沿いの重厚なゲートを抜けるとビーチ沿いにプールが広がっています。
こちらのホテルはプールの様子を見ただけで、しっかりと取材をしていませんので、いずれ詳しく紹介したいと思います。
2)Tri
様々なメディアに取り上げられているホテル。
塔の形になっているホテルの最上階にあるインフィニティープールがフォトジェニックで、インスタグラムでもよく見るホテルです。
上の写真はこちらのホテルをボートの湖面から撮影したものです。
ホテルにはまだ入っていませんので、こちらもいずれ詳しくご紹介したいと思います。
3)Kahanda Kanda
コッガラ湖の北側にある、スリランカでも知られたブティックホテル。
世界遺産ゴールフォート内にセレクトショップ「KK BOUTIQUE」
コッガラビーチの西側にあるブティックホテル「KK BEACH」
ヤーラ国立公園近くのグランピング施設「LEOPARD SAFARIS」
ウィルパットゥ国立公園近くのホテル「LEOPARD SAFARIS – WILPATTU」
なども経営している会社が最初にオープンしたのがKahanda Kandaです。
こちらも未取材のため、いずれ詳細をご紹介したいと思います。
『変わりゆく村』に出てくるスリランカ正月や食べ物
スリランカ正月
作中の季節はスリランカ正月から始まりますが、スリランカ正月についてあまり知らない人は多いと思います。作中では、火薬で遊んだり様々な食べ物を食べたりしていますよね。スリランカ正月についてあまり詳しくない人は、こちらの記事を確認するとイメージが湧きやすくなるので、ぜひ読んでみてください。
また、同時期に開催される祭りとして、復活祭も有名なので、ぜひチェックしてみてくださいね。
https://spiceup.lk/srilankaeaster/
食べ物
作中では、結婚式やお葬式のときに豪華な食事を振舞っていたり、病気のときに栄養のある食事をしていたり、と多くの食事風景が描写されています。もちろん、1世紀前の食事なので、現在とは違う部分は多々ありますが、今でも共通して食されてるものもたくさんあります。こちらの記事では、現在のスリランカの食事について、わかりやすく説明されているので、ぜひチェックしてみてくださいね。
参考)
マーティン・ウィクラマシンハ(2010)『変わりゆく村』(野口忠司・縫田健一訳)財団法人大同生命国際文化基金
MARTIN WICKRAMASINGHE Sri Lanka`s Renowned Writer
ウィキペディア:マーティン・ウィクラマシンハ
ウィキペディア:インド国際映画祭
スリランカの情報を集める大阪の大学生、スリランカのお面に興味あり
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