ワイルドライフ「スリランカ 試練の乾季 トクモンキー 群雄割拠の森を生き残れ」

インドやミャンマーにも侵攻し、仏教都市として栄えたポロンナルワ王国が残した世界遺産「ポロンナルワ」。
遺跡が点在する森に行くとよく猿を見かけますが、それはスリランカにのみ生息するトクモンキーのようです。
スミソニアン霊長類生物学センターのウォルフガング・ディタス教授の調査に同行して、NHKが4年間に渡ってトクモンキーのアルファオスと群れに取材した番組「ワイルドライフ -スリランカ 試練の乾季 トクモンキー 群雄割拠の森を生き残れ」を紹介します。
目次
トクモンキーの身体的特徴
トクモンキーの名は、頭頂部の毛が中心から外へ向かって放射状に生えており、その形がトーク帽に似ていることから。
トーク帽とは、つば(ブリム)のない山の部分(クラウン)のみの婦人用帽子で、ベールの付いたものがよく見られます。
スリランカにのみ生息するオナガザル(旧世界猿)で、その名の通り、尻尾が長いです。
小型のサルで、マカク属の中でも最も小さい猿。
下あごには首まで広がる頬ぶくろがあります。
手に入れた食べ物は一旦、頬袋に入れ、安全な場所に移動してから、あらためて食事をするという習性があり、番組でも頬袋が餌で膨れている様子が観られます。
メスは歳を重ねると顔が赤くなります。
トクモンキーの群れ・社会構造
アルファオスを頂点にした群れで暮らしています。
アルファメスはオスとメスの頂点に位置しますが、メスで一番えらいアルファメスもいます。
序列はオス、メス、子どもの順番です。
序列が高いほど、良い餌にありつけ、繁殖の機会も多くなります。
序列が低いために、食べていけないようなサルもいます。
オスの子サルは成人すると、群れを出て、他の群れに行かないといけません。
新しい群れでは、子サルよりも下の最下層に置かれ、餌にありつけず、生存が困難な状況に置かれます。
新しい群れに正式に入れてもらうには、他の群れとの縄張り争いで活躍して、認めてもらう必要があります。
この番組は、7歳になって成人したチェンジが群れを離れたところから4年間に渡って取材したものです。
新しい群れで認められて、群れの一員になった後、他の群れとの抗争によってか、群れが崩壊し、チェンジが新しい群れを作り、厳しい生存競争の中で生き残っていく姿がとらえられています。
新しい群れが作られることは珍しいことだそうです。
番組では、サルの社会的行動である毛づくろいをする様子が観られます。
アルファオス、メス、子どもに対して行なっており、サルの社会性が垣間見えます。
厳しい生存競争
ポロンナルワの森には千匹以上のトクモンキーが、35の群れに分かれて生息しています。
群れは600メートル四方ほどの縄張りを持っているそうですが、群れの縄張りが重なり合っていることが番組を観ると分かります。
縄張り争いで命を落とすこともあるようです。
トクモンキーの生息地
番組はポロナルワの森を舞台にしていますが、ワウニア、マンナール、プッタラム、クルネーガラ、アヌラーダプラ、ポロンナルワ、ケガッラ、トリンコマリー、ヌワラエリヤなどでも見られるようです。
生息地域は英語版のウィキペディアを参照ください。
Wikipedia「Toque macaque」
トクモンキーの主食は果実
主食は果実で、番組ではハカマカズラ、ムラサキフトモモ、イチジクの実、ウッドアップルを食べる様子が観られます。
ハカマカズラは、インド亜大陸原産の熱帯系の植物で、日本では主に沖縄に分布し、和歌山でも見ることができます。
ムラサキフトモモは、マラバルプラム、ジャワプラム、ブラックプラムなどの別名がある、インド亜大陸・ミャンマー・スリランカ・アンダマン諸島を原産とする植物で、黒い果実を付けます。
イチジクはアラビア南部原産で、イラン、インド、中国を介して日本には17世紀初めに伝わったとされています。
ウッドアップルは、インド、バングラディシュ、スリランカ、アンダマン諸島が原産。
その名の通り、果実は木でできているように固くて茶色の皮で覆われた球体をしています。
スリランカでは、ウッドアップル・ジュースがポピュラーで、ホテルのウェルカムドリンクで出されることもあれば、スーパーにペットボトル入りのジュースも売られています。
貴重な栄養源「シロアリ」
9月中旬に乾季のピークが過ぎて雨が降るようになったところで、蟻塚から繁殖のためにシロアリが出て飛び回っている様子が番組で観られます。
トクモンキーにとって、シロアリは栄養豊富なご馳走だそうで、一生懸命に手で捕まえて食べています。
インド亜大陸、スリランカに生息するナマケグマの主食はシロアリです。
ナマケグマが登場するのは以下の番組です。
仏教徒が大切にするトクモンキー
ブッタに蜂蜜を献上して助けたのがトクモンキーだと考えられており、仏教徒に大切にされてきたそうです。
ポロンナルワで見られる寺院のレリーフには、ブッタに蜂蜜を捧げるトクモンキーが描かれています。
蜂蜜はニゴンボのシンハラ語名の由来にもなっており、人類最初の甘味とも言われますので、重要なものだったのでしょう。
まとめ
アヌラーダプラ、シーギリヤ、ダンブッラ、ポロンナルワ、キャンディなど世界遺産がある町に行くと、多くのサルを見かけますが、この番組を観ると、トクモンキーのことが分かり、違った目線でサルを観ることができるようになります。
是非ご覧になってみてください。
参照
猿.com「トクモンキー」
【Webサル図鑑】オナガザル科オナガザル亜科ヒヒ族 Macaca属
ウィキペディア「トクモンキー」
ウィキペディア「オナガザル」
Modalina「トーク」
イサイズ「トーク帽」
ウィキペディア「ハカマカズラ」
Wikipedia「Syzygium cumini」
ウィキペディア「イチジク」
オリーブオイルをひとまわし「【ウッドアップル】ってどんなフルーツ?特徴や食べ方を解説」
東南アジア半年生活11年目の旅行記と地図「初めてWood Apple(ウッドアップル)のフレッシュジュースを飲んでみた!」
Wikipedia「Limonia acidissima」
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「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2016年12月、スリランカでの研修受け入れを開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年2月、スリランカ情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、ゲストハウス「スパイスアップ・ハウス」開設。
2020年8月、週刊「スパイスアップ・ニュースレター」創刊。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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