多摩動物公園のスリランカゾウの絵本『ともだちをたすけたゾウたち』

多摩動物公園にいるスリランカ生まれのアヌーラは日本国内で飼育されている最高齢68歳のオスのアジアゾウです。
1956年8月、三笠宮崇仁親王殿下・百合子妃殿下がスリランカでの仏陀入滅2500年祭の式典に参加し、これを記念して1956年11月にアヌーラは日本に贈られています。
アヌーラの名は、象を日本に贈ることを決めた当時のスリランカ首相のソロモン・バンダーラナーヤカ氏の息子アヌラ・バンダーラナーヤカ(අනුර බණ්ඩාරනායක)氏に由来します。
2006年5月に、アヌーラ来日50年記念式典が多摩動物公園で開催された際は、三笠宮殿下ご夫妻、アヌラ・バンダラナイケ国家遺産大臣(当時)が参加されています。
本記事で紹介する絵本は、1979年5月〜7月にかけてアヌーラが病気になった際の実話です。
1979年8月に上野動物公園の飼育課長だった中川志郎さんが多摩動物公園に転勤となり、アヌーラを助けた高子とガチャコのことを飼育係の業務報告から知ったそうです。
中川志郎さんは文筆家でもあり、多数のエッセイ、創作、翻訳の出版をされていますが、この絵本の最後の見開き2ページに中川さんの解説が掲載されています。
中川志郎さんは1984年多摩動物公園長、1987年上野動物園長、1994年ミュージアムパーク茨城県自然博物館館長、東京動物園協会理事長を歴任された方ですが、2002年5月初版発行のこの絵本の解説に以下のように書かれています。
野性のゾウでは「お産」の時に出産の介添えをするお産婆役のメスゾウの存在が知られていますが、飼育しているゾウが病気のゾウを看護するという例は私は聞いたことがありませんでした。
絵本の内容は本記事では記載しませんので、是非、絵本をご覧いただけたらと思います。
絵本の文章は、動物を題材とした児童文学を多数捜索されたわしお としこ さん、
絵は遠山繁年さんによるものです。
絵本に登場するメスゾウの高子は1990年に42歳で、ガチャコは1993年に37歳で亡くなっています。
その後、2012年11月にピンナワラの象の孤児院から8歳のメス「アマラ」、5歳のオス「ヴィドゥラ」が来園し、2021年8月1日には新アジアゾウ舎「アジアゾウのすむ谷」が完成・公開され、スリランカ生まれのアジアゾウたちの姿を見ることができますので、多摩動物公園にも是非行かれてみてください。
参考)
EhonNabi:わしお としこ
偕成社 :遠山繁年
ウィキペディア:中川志郎
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「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
歴史・地理・建築・語源が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にてベトナム・ミャンマー・タイ・インドネシア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の設立を開始。
2017年2月、スリランカ専門誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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