10月1日は国際コーヒーの日 〜ナチュラルコーヒーが取り組むスリランカのフェアトレード〜
毎年10月1日は国際コーヒーの日(International Coffee Day)です。
2015年から国際コーヒー機関(ICO:International Coffee Organization)によって定められていますが、その起源は日本にあります。
1983年に全日本コーヒー協会が10月1日にコーヒーの日のイベントを始めたことがきっかけとされています。
国際コーヒーの日はフェアトレードコーヒーの普及を促し、コーヒー農家の苦境について知る日とされています。
本記事では、国際コーヒーの日とともに、スリランカでコーヒー栽培の指導をし、フェアトレードでコーヒー豆を輸入して日本で販売、カフェを経営する熊本のナチュラルコーヒーについて紹介します。
なぜ10月1日なのか?
コーヒーは国際協定によって、新年度は10月1日から始まるため、10月1日をコーヒーの日として定めたと言われています。
10月を新年度とするのは、コーヒー世界生産1位のブラジルでは毎年5月から9月までコーヒーの収穫を行い、10月には収穫が終わりコーヒーが出荷されることから、ブラジルのコーヒー栽培のサイクルに合わせたものだとされています。
日本からブラジルへの移民は1908年(明治41年)から開始され、2年後の1910年(明治43年)には銀座にカフェーパウリスタが開業しています。
カフェーパウリスタは、ブラジルのサンパウロ州政府からコーヒー豆の継続的供給と販売権を受けて創業しています。
日系移民の多くがブラジルでコーヒー栽培に関わり、現在も日系人によるコーヒー栽培が行われており、日本とブラジルのコーヒー生産には明治時代から関係があります。
また、日本ではコーヒーの需要は冬季に伸びることから、10月1日にコーヒーの日を定めたのではないかと言われています。
全日本コーヒー協会がコーヒーの日を始めた1983年、日本紅茶協会が11月1日を「紅茶の日」と定めています。
どちらが先に定めたのかは分かりませんが、同じ年に制定しているのは興味深いです。
スリランカにおけるコーヒー栽培
スリランカはかつて世界3位の生産高を誇るコーヒー生産国で、世界中に領土を有した大英帝国においては世界1位の生産高でした。
スリランカにおけるコーヒー生産の歴史、イギリス統治時代のコーヒー生産量のデータをまとめているのがナチュラルコーヒーの創業者である清田和之さんの著書『セイロンコーヒーを消滅させた大英帝国の野望―貴族趣味の紅茶の陰にタミル人と現地人の奴隷労働』です。
研究者の旦部幸博さんの著書『珈琲の世界史 (講談社現代新書)』には、生産量・品質ともに優れたスリランカ産のコーヒーがさび病によって、大きなダメージを受けたことが記述されています。
スリランカでのコーヒー栽培は紅茶の影に隠れながらも続けられ、スリランカのスーパーではコーヒーパウダーが販売されていますが、普及品の安価なコーヒーです。
そんな中で、スペシャルティコーヒー志向のスリランカでのコーヒーの栽培・販売・カフェの経営を行なったのが、オーストラリア人のジェームス・ホワイトさんでしょう。
ジェームスさんは1996年にコロンボに開業したレストラン「クリケットクラブカフェ」のオーナーで、2001年にスリランカ産コーヒーの専門カフェ「Whight & Co.」をコロンボにオープンしています。
以下の記事はジェームスさんの奥様であるギャビーさんのインタビュー記事です。
有機無農薬コーヒー専門店「ナチュラルコーヒー」の取り組み
熊本にある有機無農薬コーヒー専門店「ナチュラルコーヒー」の創業者である清田和之さんは、NPO法人日本フェアトレード委員会の代表者でもあり、スリランカでのコーヒー栽培の支援及びスリランカとのコーヒーと紅茶のフェアトレードを行っています。
清田和之さんは幼稚園、通販コンサルティング業、コーヒー専門店、NPO法人日本フェアトレード委員会と、次々と事業を立ち上げられ、今年で75歳です。
私は2018年にスリランカでお会いしましたが、大変エネルギッシュな方です。
清田さんがスリランカのコーヒー栽培、フェアトレードに関わった経緯を以下にまとめました。
清田さんは1978年に地元熊本に幼稚園(学校法人北部学園・北部幼稚園)を設立されています。
その後、熊本を本社とする再春館製薬で働いた後に、通販コンサルタントとなり、1992年に『売上100倍達成への軌跡―再春館・顧客満足のテレマーケティング』を出版されています。
通販コンサルタントをする傍ら、自分で商品を持って通販をしようと思うようになったそうです。
そして、北部幼稚園では有機無農薬の食材を使った給食の提供にこだわっていたことから、ブラジルで初のJAS認定を取得したイヴァンさんのことを知ります。
1994年に有機無農薬コーヒーの輸入・販売を行う株式会社ナチュラルコーヒーを熊本に創業。
1997年に初めてブラジルを訪れ、コーヒー農家が置かれた厳しい環境を知ったそうです。
2002年、コーヒー価格の大暴落の年に再度ブラジルを訪れ、有機無農薬栽培のコーヒー生産に取り組むミナスジェライス州ポッソフンド村で、大暴落の値段よりも遥かに低い金額で売買が行われていることから、フェアトレードをして欲しいと現地の人に言われたそうです。
2004年、ポッソフンド村を再訪するとドイツのフェアトレード団体が6倍の価格で2002年・2003年と購入し、2004年・2005年分の買付予約も行ったことで村が明るくなり、フェアトレードの価値を知ります。
日本に帰国して、熊本に特定非営利法人日本フェアトレード委員会を設立されています。
2004年12月26日、フェアトレードで紅茶を仕入れていたスリランカがスマトラ島沖地震で被災したことから、2005年1月24日にスリランカに初渡航。
この時にかつてスリランカがコーヒー生産大国であったことを知ったそうです。
コーヒーが生産されているマータレーを訪問するも、そこで栽培されていたのはロブスタ種と著作に記されています。
スマトラ島沖地震については、以下の記事を参照ください。
2005年8月、清田さんはキャンディ県ハプカンダ村でアラビカ種が栽培されているを見つけ、続いて2006年5月にコットマレーのラワナゴダ村でアラビカ種が栽培されているのを見つけます。
清田さんはJICA・草の根協力事業に応募して採択されて、ラワナゴダ村をプロジェクト地として、2007年9月〜2010年3月の期間で「コットマレー地域の小農民によるアラビカ・フェアトレード・コーヒー栽培のコミュニティ開発」に取り組み、現地にコーヒー工場を設立されています。
工場は電気の供給が安定しないことなど問題も多かったそうですが、「2011年6月に完成をめどに日本の建築業者がODAで水力発電所の作っている。これが完成すれば電力事情はかなり良くなるだろう」と著書『コーヒーを通して見たフェアトレード―スリランカ山岳地帯を行く』に書かれています。
この水力発電所の建設プロジェクトに前田建設の社員として関わり、ラワナゴダ村でのコーヒー栽培のプロジェクトを知ったのが、後にキャンディにカフェ「Natural Coffee」を開店した吉盛さんです。
吉盛さんについては、以下の記事をご覧ください。
セイロンコーヒーで女性の雇用を!カフェ「ナチュラルコーヒー(Natural Coffee)」代表、吉盛真一郎さんインタビュー
清田さんはスリランカに現地法人「Kiyota Coffee Company」を設立し、スリランカ国内で卸売りをされています。
事務所と焙煎工場はともにマータレーにあります。
日本で買えるスリランカのフェアトレードコーヒー
熊本の株式会社ナチュラルコーヒーは、2017年4月にカフェと焙煎所を併設した事務所を新築しています。
2016年4月14日に発生した熊本地震で移転を予定していた先のテナントビルが被災したことから、移転せずに新築されたそうです。
私は2017年4月21日にプレオープンしたカフェに訪問し、現社長で創業者の息子である清田史和さんにお会いしました。
ナチュラルコーヒーでは、無農薬・有機栽培のブラジル・コロンビア・グアテマラ・コロンビア・エチオピア・メキシコ・ペルー・スリランカのコーヒー豆を販売されています。
創業当初から扱っているブラジルのイヴァンさんのコーヒーはミディアムロースト、シティーロースト、フルシティーローストを扱っていますが、スリランカはシティーローストとフルシティーローストの2種類です。
スリランカの有機セイロンシナモンをスリランカ豆にブレンドした「セイロンシナモンコーヒー」、ウバ産のオーガニックのセイロンティーも販売されています。
スリランカコーヒーは200gで1,150円(税込)
セイロンシナモンコーヒーは200gで1,100円(税込)
です。
コーヒー専門店で買うコーヒー豆としては手頃な値段で、コクと甘味のある美味しいコーヒーが購入できます。
東京でスリランカレストランを経営する知人から「スリランカ産のコーヒーを扱いたいがスリランカにある会社に問い合わせたら高額を提示されて、流石に扱い。良心的な価格でスリランカ産コーヒーを購入できないだろうか?」と相談されてナチュラルコーヒーさんを紹介したところ「品質も値段も素晴らしい!」とお店で取り扱いが始まりました。
私は今回の日本滞在中に、いくつものコーヒー専門店でコーヒー豆を購入しましたが、その中でもナチュラルコーヒーさんのコーヒー豆は手頃な値段です。
さらに、本日10月1日から11月7日まで「秋の10%増量キャンペーン」、かつ、スリランカ応援企画でスリランカコーヒーを購入の場合、スリランカコーヒードリップパックが1個プレゼントされます。
豆・パウダー・ドリップパックを選択できますので、ご自宅でスリランカ産のコーヒーを飲みながら、国際コーヒーの日のコンセプトであるフェアトレード、サスティナブルなコーヒー産業のあり方について思いを馳せて見ませんか?
参考)
ウィキペディア:国際コーヒーの日
なぜ10月1日がコーヒーの日なの?理由とイベント開催キャンペーン情報
PREAGE:我が人生〜清田和之氏
JICA:草の根協力支援型 平成19年度 採択内定案件
幻の・・・スリランカ・コーヒープロジェクト報告
スリランカ国 農村生産者コミュニティのコーヒー分散 型生産・集約管理システムの導入基礎調査 業務完了報告書
一般社団法人日本フェアトレード委員会 公式サイト
下硯川町にカフェと焙煎工場を併設した事務所を新築・ナチュラルコーヒー
Kiyota Coffee Companyk公式サイト
coffee mecca:シティローストとは?
coffee mecca:フルシティローストとは?
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「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2016年12月、スリランカでの研修受け入れを開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年1月、スリランカ情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」開始。
2020年8月、不定期配信の「スパイスアップ・ニュースレター」創刊。
2023年11月、サービスアパートメント「スパイスアップ・レジデンス」開始。
2024年7月、スリランカ商品のネットショップ「スパイスアップ・ランカ」開設。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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