スリランカ正月「シンハラタミルニューイヤー」〜4月に新年を迎える国と地域〜
スリランカを始め、南アジア、東南アジアでは、4月13日〜14日にかけて新年を迎える国・地域が多くあります。
スリランカは毎年年明け時刻が変わりますが、2022年の新年は4月14日8時41分です。
本記事では、スリランカの新年について紹介します。
4月に新年を迎える国々
おそらく、4月に正月を祝う国として最も知られているのは、盛大に水掛け祭りが行われるタイ正月「ソンクラーン」ではないでしょうか。
4月14日に水掛け祭りを行う国と地域
東南アジア、東南アジアに隣接した中国の雲南省シーサンパンナ・タイ族自治州では、上座部仏教(テーラワーダ仏教)が多数派であり、これらの国と地域では、水掛け祭りとともに、4月14日に新年を迎えます。
・タイ正月「ソンクラーン」
・カンボジア(クメール)正月」チョール・チュナム・トメイ」
・ミャンマー正月「シングヤン」
・ラオス正月「ピーマイラーオ」
・中国の雲南省シーサンパンナ・タイ族自治州
タイ、ミャンマー、ラオスでは水かけ祭りが行われますが、カンボジアでは11月に水かけ祭りが行われます。
ただ、アンコールワットでは4月に水かけ祭りが行われます(アンコール・ソンクラーン)。
水掛け祭りは現在は派手なお祭りになっていますが、本来は寺院の仏像に水をかけて参りする行事です。
私は2018年のソンクラーンはバンコクを訪れましたが、街中は水鉄砲で打ち合いましたが、寺院の中では仏像に水をかけて花を供えてお祈りする人々の姿が見られました。
水掛け祭りに似たお祭り「灌仏会」が日本にはあります。
毎年4月8日にお釈迦様の誕生を祝い、仏像に甘茶をかけます。
タイのソンクラーンはJETROの祝日のページでは灌仏節と記載されています。
タイはブッダの生誕はスリランカと同様に5月の満月の日「仏誕節(ウェサック:Wisakha Bucha Day)」に祝いますが、日本の灌仏会はタイにおけるソンクラーンと、ウェサックが一緒になったようなものかもしれません。
4月13日〜15日に新年を迎える(水掛け祭りなし)国と地域
南アジアの国と地域では、水掛け祭りは行われません。
ただし、3月の満月の日に、ヒンドゥー教徒はホーリーで、色粉と水を掛け合います。
・ネパールの正月「ヴァイサーク(Vaiskahi:ヴィクラム暦のヴァイサーク月の1日)
・インドとパキスタンのパンジャーブ地方の正月「ヴァイサーク」
・インドのジャンムー地方の正月「ヴァイサーク」
・インドのヒマーチャル・プラデーシュ州の正月「ヴァイサーク」
・インドのウッタル・プラデーシュ州の正月「ヴァイサーク」
・インドのハリヤナ州の正月「ヴァイサーク」
・インドのミティラー地方のミティラー正月「Jur Sital」
※古代のミティラー王国があった、マイティリー語が話されている地域。
※ミティラー地方の大半を占めるビハール州ではアショーカ王の誕生日を4月14日に祝う習慣もあります。
・インドのアッサム州の正月「Bohag Bihu」
・バングラディシュ、インド西ベンガル州のベンガル新年「ポヘラ・ボイシャク(Pahela Baishakh)」
※ベンガル正月には別名があり、Noboborsho、Boishakiとも呼ぶれます。
・インドのオリッサ州の正月「パナ・サンクランティ(Pana Sankranti)」
・インドのケララ州の正月「Vishu」
・インドのタミル・ナードゥ州の正月「Puthandu」
・スリランカの正月「Puthandu(タミル語)」
・スリランカの正月「Aluth Avuruthu(シンハラ語)」
太陰暦で3〜4月に新年を迎える地域
太陰暦のため毎年日付が変わり、3〜4月頃に新年を迎える地域もあります。
・インドのカシミール地方のカシミール正月「Navreh」
・インドのアーンドラ・プラデーシュ州、テランガーナ州の正月「Ugadi」
・インドのカルナータカ州の正月「Yugadi」
・インドのマハーラシュハトラ州、ゴア州の正月「Gudi Padwa」
・シンド地方(パキスタン南部、インド北西部)の正月「Cheti Chand」
スリランカの新年「シンハラタミルニューイヤー」
スリランカの新年は以下のように呼ばれます。
英語:Sinhala and Tamil New Year
シンハラ語:Aluth Avurudda
タミル語:Puthandu
スリランカ正月は仏教、ヒンドゥー教、占星術、先住民族の文化などが融合したスリランカ独自の文化となっています。
占星術師たちが決める新年の日時
新年を迎えるのは4月13日または14日に祝われますが、毎年時間が変わります。
新年は太陽がうお座から移動しておひつじ座に入ったときとされており、毎年ベテラン占星術師たちによって年越しの時間が決められます。
黄道十二宮はおひつじ座から始まり、うお座で終わり、1年で一周します。うお座からおひつじ座に太陽が移ったことで、新しい年に替わります。
ちなみに黄道とは、天球上における太陽の見かけ上の通り道のことです。
東南アジアの国もかつては時間が変わっていたそうですが、現在は日付で固定されていますが、スリランカは現在も毎年時間が変わります。
2024年4月13日21:05
2023年4月14日14:59
2022年4月14日08:41
2021年4月14日02:33
2020年4月13日20:23
2019年4月14日14:09
2018年4月14日08:13
2017年4月14日02:04
2016年4月13日19:48
2015年4月14日13:47
黄道十二宮は、天球を30度ずつ12等分したものですが、15度ずつ24等分したのが二十四節気です。
二十四節気の春分に当たるのが、おひつじ座です。
イラン文化圏は春分が正月なので、イラン文化圏とインド文化圏の主な地域では、春分の時期に正月を祝っているとも言えそうです。
一方で、干支は冬至で一年があけ、クリスマスも冬至祭が起源の一つと言われていますが、ロシア正教などが使っているユリウス暦では1月14日が元旦です。
そして、タミル人のタミルタイポンガルは大晦日と三が日のように4日間渡ってお祝いされますが、タミルタイポンガルの1日目は1月15日です。
タミル人は冬至も春分も祝うわけです。
2021年の新年スケジュール
シンハラタミルニューイヤーの大晦日、元日は国民の祝日となっており、それぞれのお家では占星術によって決められたタイムテーブルに従って一日を過ごします。
タイムスケジュールの儀式ごとに着る服の色、見る方角も決められています。
年越しの時間を含めて、タイムスケジュールの詳細は新年前に発表されます。
普段は時間にとらわれないスリランカ人ですが、この日だけは分単位で決まったスケジュールに従います。
年明け時刻に合わせて、各儀式の時間、身につける服の色や向く方向も毎年変わるため、ニューイヤー前の発表をチェックします。
4月13日 02:17 〜 14日15:05 仕事や料理をしてはいけない
この時間に仕事や料理など何かを生産する行為をするのは良くないといわれています。
この時間が始まる前までに仕事や料理を済ませます。
4月14日 08:41 新年
新年の始まり。爆竹でお祝いする家庭もあります。
4月14日 09:05 吹きこぼしの儀式
金色の服を着て、東の方角を見ながら、かまどに火を入れます。
かまどには、新しい器にココナッツミルクとライスを入れ、沸騰させます。
ココナッツミルクが吹きこぼれるのを見守ります。
ココナッツミルクが吹きこぼれるのは豊穣のあかしです。
4月14日 10:17 食べ始めの儀式
金色の服を着て、東の方角を見ながら、新年最初の食事を始めます。
母親や家長が家族にココナッツミルクで作るミルクライス(キリバット)を食べさせます。
その後、目上の人(両親など)にぬかずいて挨拶をします。
4月17日 07:04 オイルの儀式
赤と黄色の服を着て、南の方角を見ながら、オイルを頭に塗ります。
4月19日 06:51 仕事始め
白い服を着て、南の方角を見て、家を出ます。
上記のスケジュールの前に、お正月の準備として、家を塗り直したり、床を磨いたり、キッチンの掃除、いらないものを捨てて必要なもの新しく買うなどするそうです。
お正月料理
Awurudu Tableといわれ、食べ始めの儀式の際に綺麗に並べられます。
まず、代表的なものは、儀式でも登場するキリバット(キリはミルク、バットは炊いた米の意味)です。
新年以外でもお祝い事などで食べられます。
平らに広げて、ひし形に切って、ルヌミルス(ルヌは塩、ミルスは唐辛子の意味)を添えて食べることが多いです。
冒頭の写真は白米で作ったキリバット、下の写真は赤米で作ったキリバットです。
それ以外にはスイーツが準備されます。
コキス(Kokis):米粉とココナッツミルクを揚げて作るお菓子。星型に
キャウン(Kavum):米粉とクジャクヤシの糖蜜から作る揚げた甘いオイルケーキ
トフィー(Toffee):バターと砂糖、ココナッツミルクなどを加熱して作るお菓子。
アルワ(Aluwa):米粉またはジャガイモ、糖蜜 、カシューナッツ、カルダモンから作る平らなクッキーのようなお菓子。
アッガラ(Aggala):米、ココナッツ、コショウ、ジャガリーもしくは糖蜜で作る丸いお菓子。
スリランカ版お年玉
スリランカにもお年玉のような習慣があります。
キンマの葉にお金を包んで渡します。
正月遊び、正月行事
日本にも似た色んなゲームが行われます。
パン食い競争
綱引き
福笑い
ピロー・ファイト(枕での殴り合い)
ラバン(伝統的なドラム)
ぬるぬる棒登り
壺割り
ビューティークイーンコンテスト
ピロー・ファイトは、丸太や棒にまたがって、向かい合って座る2人が枕で叩き合って、相手を叩き落とすゲームです。
修学旅行の枕投げをサシでガチで行うようなイメージです。
ぬるぬる棒登りはオイルなどでぬるぬるになった棒をよじ登って旗を取るゲームです。
壺割りは吊るされた壺を棒で叩き割ります。
福笑いは象さんの目を置いていくようですが、日本の福笑いと似ています。
ラバンは伝統的な太鼓で、太鼓を囲って、みんなで演奏します。
まとめ
今回はスリランカにおける正月のご紹介でした。
今年は外出ができませんし、材料が手に入らないかもしれませんが、正月のタイムスケジュールに合わせて、着替えをしたり、料理をしたり、少しでも楽しく家の中で過ごせたらと思います。
参考)
Wikipedia:Public holidays in India
Incredible India:Baisakhi
朝日新聞デジタル:多彩なキノコ、屋台で調理
United GIPs:お正月(インド編)
Wikipedia:Navreh
Wikipedia:Ugadi
Wikipedia:Gudi Padwa
Wikipedia:Cheti Chand
Wikipedia:Mithila
ウィキペディア:ミティラー
ウィキペディア:マイティリー語
Wikipedia:Vaisakhi
Wikipedia:Bihu
Wikipedia:Bohang Bihu
Wikipedia:Pana Sankranti
Wikipedia:Pahela Baishakh
Wikipedia:Boishakhi Mela
JETRO:バングラディシュ 祝祭日
Wikipedia:Jur Sital
adaderana.lk:Auspicious times of Sinhala and Tamil New Year 2021
Daily News:Sinhala and Tamil New Year Auspicious Times (NEKATH) 2020
シンハラ&タミル正月を紹介する動画
日本語で紹介しているシンハラ&タミル正月の解説
日本語で紹介しているシンハラ&タミル正月の様子
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「旅と町歩き」を仕事にするためスリランカへ。
地図・語源・歴史・建築・旅が好き。
1982年7月、東京都世田谷区生まれ。
2005年3月、法政大学社会学部社会学科を卒業。
2005年4月、就活支援会社に入社。
2015年6月、新卒採用支援事業部長、国際事業開発部長などを経験して就職支援会社を退社。
2015年7月、公益財団法人にて東南アジア研修を担当。
2016年7月、初めてスリランカに渡航し、会社の登記を開始。
2016年12月、スリランカでの研修受け入れを開始。
2017年2月、スリランカ情報誌「スパイスアップ・スリランカ」創刊。
2018年1月、スリランカ情報サイト「スパイスアップ」開設。
2019年11月、日本人宿「スパイスアップ・ゲストハウス」開始。
2020年8月、不定期配信の「スパイスアップ・ニュースレター」創刊。
2023年11月、サービスアパートメント「スパイスアップ・レジデンス」開始。
2024年7月、スリランカ商品のネットショップ「スパイスアップ・ランカ」開設。
渡航国:台湾、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、タンザニア、ウガンダ、フランス、イギリス、アメリカ
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