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『バワと研吾 -クラブ・ヴィラ-』The Bridge of Culture Vol.02

2021年5月16日

ばんせいグループが経営するバワ建築のブティックホテル「クラブ・ヴィラ」は、隈研吾さんによるリノベーションが行われました。

隈研吾さんによるクラブ・ヴィラのリノベーションと、2019年7月23日に行われたバワ生誕100周年記念イベントでの隈研吾さんによる記念講演についてまとめられた本を紹介します。

本書は、ばんせい総合研究所が企画し、隈研吾さん、ばんせいグループ取締役会長の村上豊彦さん、ジェフリーバワ財団理事長のチャンナ・ダスワッテさん、ライターの高柳圭さんの文章が掲載され、写真は中村力也さん、デザインは塚原敬史さんが担当されています。

本記事では、クラブヴィラ、リノベーション、バワ100周年記念の隈研吾さんの作品、ばんせいグループについて紹介します。

本書は、綺麗な写真が印象的でデザインの良い本ですので、ぜひお手元に!

日本を代表する隈研吾さんが表現するバワ建築は的確で、スッとバワ建築を理解できます。

クラブヴィラとは?

ジェフリーバワが1967-1970年に建設したSerendib Hotel(現 アヴァニベントタリゾート)の開業時から総支配人だったS. M. A. ハミードがバワに依頼して設計したヴィラです。

バワはモホティ・ワラーウィ(現 パラダイスロードザヴィラ)を気に入り、友人たちに購入を勧めます。

セレンディブホテル(現 アヴァニベントタリゾート)の総支配人のS. M. A. ハミードに購入を勧めるも、ハミードは南側の隣接地を購入し、バワにヴィラの設計を依頼します。

こうしてできたのがクラブ・ヴィラです。

モホティ・ワラーウィ(現 パラダイスロードザヴィラ)の購入者が見つからなかったことから、バワが自ら購入して改装を行い、後にバワが売却して、モホティ・ワラーウィも合わせて、クラブ・ヴィラとして経営されます。

その後、2007年にモホティ・ワラーウィはパラダイスロードが経営することになり、2つのブティックホテルに分割され、南側のハミードがバワに設計を依頼した部分がクラブ・ヴィラとなります。

2016年に、ばんせいグループの所有となります。
2019年に、隈研吾さんによる改装が行われています。

現在、17室の客室があり、オランダ統治時代の家具が配置されています。
そのためか、ホテルのロゴはオランダ東インド会社(VOC)のロゴに似ています。

隈研吾さん改装のバワホテル「クラブヴィラ(Club Villa)」

ばんせいグループとは?

明治41年(1908年)創業のばんせい証券が母体の企業グループです。
隈研吾さんが、ばんせい総合研究所の顧問になられています。

ばんせいグループはスリランカにホテルを2つ経営し、3つ目のホテルをアフンガッラで計画中で設計は隈研吾さんが担当されるようです。
スリランカの代表的なアーユルヴェーダブランドのスパセイロンを日本で展開し、銀座店には会員制のサロン「Lounge Ceylon Time」を運営しています。

もう一つのホテル「Coral Rock by Bansei 」の運営会社である「BANSEI ROYAL RESORTS HIKKADUWA PLC」はコロンボ証券取引所に上場しているため、アニュアルレポートが公開されています。

ヒッカドゥワビーチの絶景が楽しめる日系ホテル「Coral Rock by Bansei」

スリランカ関連事業の展開

2010年12月、BANSEI ROYAL RESORTS HIKKADUWA PLCを設立。
2013年、ばんせいグループが、Pan Asia Banking Corporation PLCと資本提携および業務提携。
2014年3月、コロンボ証券取引所にBANSEI ROYAL RESORTS HIKKADUWA PLCが上場。
2016年4月、バンセイアーユルヴェーダ株式会社を設立
2019年7月、スリランカ投資局とアフンガッラでのブティックホテル建設・運営するWakana JPN(Pvt) Ltd.が協定。

日本人初のスリランカ証券取引業ライセンス認可を受けた五十嵐 尚さん

Pan Asia Banking Corporation PLCはスリランカの大手銀行ですが、2012年10月から五十嵐 尚さんがディレクターになっています。
翌年にばんせいグループが資本提携・業務提携していますので、Pan Asiaは日本との関係があると言えそうです。

五十嵐さんの過去のインタビューを見ると、「祖父の経営する自動車の貿易会社、金融専門のソフトウエア会社共同経営などを経て2010年、日本人で初めてスリランカ証券取引業ライセンスの認可を受けてニューワールド証券を設立。Ramboda Falls Hotelの会長、NWS Holdings (Pvt) Ltd, NWS Management Services (Pvt) Ltd and Prime Ocean Foods (Pvt) Ltd.のディレクター」とあります。

NWS Holdingsは、日本食レストラン「Sushi Bar Samurai」を経営している会社で、弊誌への広告掲載で取引がありました。

私は五十嵐さんから、Ramboda Falls Hotel近くのRamboda Tunnelは日本政府のODAで作られたスリランカ国内最長のトンネルで、スリランカの紙幣にも描かれていることをお伺いしました。

当時は私は不勉強で、五十嵐さんがそのお話をされたのは、Ramboda Falls Hotelのディレクターでもあるからでしょう。
それに気づいておりませんでした。

数多くの会社を経営するDeshabandu Tilak de Zoysaさん

BANSEI ROYAL RESORTS HIKKADUWA PLCのスリランカ人のディレクターは、Deshabandu Tilak de Zoysaさんです。
スリランカで20社ほどの経営をしているという、バリバリのビジネスマンのようです。

日本関係のご経歴が見られ、日本との深いようです。
・元スリランカ日本友好協会会長
・旭日中綬章
・INOAC Polymer Lanka Pvt Ltd
・Japan Sri Lanka Technical & Cultural Associationの会長
・Sasakawa Memorial Sri Lanka Japan Cultural Centre Trustのディレクター

スリランカでタージホテルを経営するTAL Lanka Hotelsの経営にも関わっています。

また、コングロマリットのCarson Cumberbatchに経営にも関わっています。
Carson Cumberbatchはイギリス統治時代にコーヒー農園・ゴム農園でスリランカで創業。
ゴム農園でマレーシアに進出し、現在はパーム油農園に転換。
インドネシアでもパーム油農園を経営している。
傘下にライオンブルワリー、Pegasus Reef Hotel、Giritale Hotelなどがある、大きなコングロマリットのようです。

日本でのスパセイロンの展開

スパセイロン(SPA CEYLON)製品の日本国内での販売及び店舗を展開しています。
銀座店、日本橋店(茅場町)、福岡店、新宿高島屋店、京都高島屋店、松坂屋名古屋店、大丸心斎橋店があります。

スパセイロンの製品を卸しているのが、以下の店舗です。
神保町いちのいち 有楽町店
神保町いちのいち 神保町店
神保町いちのいち グランスタ丸の内店
神保町いちのいち 池袋店
神保町いちのいち 東京ソラマチ店
アミューズ ボーテ 大丸梅田店

銀座店には会員制のサロン「Lounge Ceylon Time」を併設しています。

“モノ書き旅館”神楽坂 和可菜 とWakana JPN

ばんせいグループは、隈研吾さん取り組む文化事業として、“モノ書き旅館”神楽坂 和可菜 を挙げています。

和可菜は、“山田洋次”、“石堂淑朗”、“内田吐夢”、“田坂具隆”、 “今井正”、“倉本聰”をはじめ、日本を代表する有名な文豪たちが集った旅館だそうです。

アフンガッラにブティックホテルを経営する会社「Wakana JPN(Pvt) Ltd.」の名は、ここからきているのでしょう。

Wakana JPNのディレクターの一人は、ばんせい証券の常務取締役の太田 博之さんのようです。

ばんせいグループの村上豊彦さんとは?

本書の「はじめに」の文書は、ばんせいグループ取締役会長の村上豊彦さんによるもので、隈研吾さんと村上豊彦さんによる対談も掲載されています。

村上さんのご経歴で分かるのは以下の通りです。

2002年6月〜2005年8月 エイチ・エス証券の取締役
2005年11月、ばんせい証券に入社、全国保証株式会社のアドバイザーに
2006年2月、副社長に就任、全国保証株式会社のアドバイザー退任
2009年6月、ばんせい証券の代表取締役社長に就任
2013年6月、BANSEI ROYAL RESORTS HIKKADUWA PLCの経営に参画

現在の役職(2018-2019のアニュアルレポート時)
Pan Asia Banking Corporation ディレクター
Vallibel Finance PLC ディレクター
Bansei Holding LK (Pvt) Ltd. ディレクター
Bansei Securities Capital (Pvt) Ltd. ディレクター
Bentota Club Villa (Pvt) Ltd.  ディレクター
BANSEI ROYAL RESORTS HIKKADUWA PLCのDeputy Chairman

隈研吾さんが語るジェフリーバワ

隈研吾さんのバワ建築に関する説明が秀逸です。

バワの空間は、実際に暮らすことが大事である。そして幸いなことに、クラブ・ヴィラで僕はその体験をした。暮らすということは、写真でみるのではなく、その場所の特別な土の上で、その場所の空気を吸い、風を感じ、海の香りを嗅ぎながら建築を体験し、建築とひとつになることである。バワは、場所という存在の価値を理解していた。建築は場所に帰属し、場所が建築に帰属するわけではない、ということを知っていた。場所の邪魔をせず、むしろ場所をひきたてて、場所と一緒に呼吸することこそが、建築の役割であることを知っていた。

家具の設計もするバワの特徴を説明しつつ、あまり建築に手をつけずにリノベーションしたクラブ・ヴィラの方針にもつながるお話も流石です。

バワは二つの方法を駆使して、建築を場所に溶かし込み、建築に自由を与えていった。僕自身、バワから学んだ最も重要な二つの方法である。ひとつは、建築を、物を入れる器としてデザインをせずに、物の集合体としてデザインするという方法である。バワは建築に置かれる家具、小物、カーテンにも徹底的にこだわった。そのような物達を取り去ってしまった時、バワの建築の魅力が半減することに僕は気づいた。

二つ目の方法は是非、本書でご覧ください。

日本人がバワ建築を好きになる要因が述べられています。

バワは半外部の空間、すなわち外と内の中間にある空間を大事にしました。日本でいえば、さしずめ縁側空間です。(中略)空調第一主義によって地球温暖化が起こり、地球環境は破壊されるとジャーナリストならば叫ぶところですが、バワは外部空間よりも、そして空調された内部空間よりもさらに快適な半外部空間を創造して、にやっと微笑んでいるように、私には感じられます。

デイヴィット・ロブソンさんは著書『Geoffery Bawa The Complete Works』でベントタビーチホテル(現:シナモンベントタビーチ)は空調を使う指示が建築主から出て、残念な形になったと書かれています。

また、イナ・デ・シルヴァ邸の説明においても、イナ・デ・シルヴァが空調を使わないことを望んだとも記述されています。

縁側のような設計が、自然を生かした、地球に優しいものになっているのが、懐かしくて、新しく感じる要因なのでしょう。

隈研吾さんがこうも言っています。

バワが建築界で注目され始めたのは2000年頃でした。

バワは脳卒中で倒れて1998年に引退しますが、その後の2001年にアーガー・ハーン建築賞で委員長賞を受賞したことが世界的に有名になるきっかけと一般的に言われています。

隈さんはそのことをおっしゃっているのかと思います。

アーガー・ハーン建築賞の委員長賞は、優れた建築家の生涯の業績に対する功労賞とされていて、以下の4名が受賞しています。
1980年:ハッサン・ファトヒー(中東建築の父とも言われるエジプトの建築家・都市計画家)
1986年:リファト・チャディルジ(近代イラク建築家の父とも言われるイラクの建築家・写真家・作家・教育者)
2001年:ジェフリー・バワ(アジアリゾートの父とも言われるスリランカの建築家)
2010年:オレグ・グラバール(フランス生まれでアメリカに帰化したイスラーム美術を専門とする考古学者・美術史家。)

アーガー・ハーン建築賞はイスラーム建築が対象のため、イスラム教徒の建築家が受賞することが通例ですが、イスラム教徒の血を引いてはいますが、イスラム教徒ではないバワが受賞したことは、快挙とされています。

隈研吾さんによるクラブ・ヴィラのリノベーション

村上さんが隈さんに依頼して、クラブ・ヴィラのリノベーションは行われています。

本書にある隈さんの言葉を引用しながら紹介します。

レセプションのソファー

レセプションに大きな1枚の座布団を巻(MA)いたような形が特徴のソファー「MA SOFA」が置かれています。
これは隈研吾さんと日本の家具メーカー「タイムアンドスタイル」がコラボレーションしてデザインしたものです。
布はスリランカの工房で糸作りから染色、織りまで職人が手をかけて仕上げたコットン。

色はクラブ・ヴィラの空間をイメージしながら選び、かすかに緑色が入っているところが気に入っています。

レセプションのベンチ

レセプションの壁のラキセナナヤケの絵の下に、

長くて低いベンチをデザインしました。絵の邪魔にならないように、可能な限り低くし、またエッジは薄くしました

ラウンジバー

ラウンジの前のパーゴラの下に、小さなバーを増設しました。薄い木の枝を組み合わせただけの簡単なバーです。スリランカの手織りの赤い布を使って、ザブトンをイメージしたスチールを、このバーのためにデザインしました。スチールパイプを組み合わせて作った棚と足置きのデザインに苦心しました。パイプとパイプのジョイント部分を少しずらすことによって、クラブ・ヴィラの風の抜ける感じと調和する軽やかなるスツールができました。

庭の照明器具

庭の樹木を照らし上げる照明器具が追加されています。

インスピレーションを得た庭の椅子

バワがデザインした庭に置かれている黒いスチールの椅子からインスピレーションを得て、バワ生誕100周年の隈研吾さんの作品はデザインされたそうです。

鉄で作られているにもかかわらず、透明さがあり、軽やかな漢字がします。移動用の車輪も大きめで、とてもチャーミングです。

オリジナル食器「SHIRO」

隈研吾さんがデザインし、1973年からスリランカで洋食器を作るノリタケが製造したオリジナルの食器「SHIRO」

ちなみに、クラブ・ヴィラのシェフのラザニアを、バワは好んで食べていたそうです。

隈研吾さん改装のバワホテル「クラブヴィラ(Club Villa)」

バワ生誕100周年記念作品「KITHUL-AMI」

スチールメッシュのフレームにキトゥルヤシのドライフラワーが使われた隈さんの作品について、ジェフリーバワ財団理事長で、バワ後期のパートナーである建築家のチャンナ・ダスワッテの文書で説明しています。

キトゥルヤシの花のドライフラワーが編み込まれています。この編み込みはスリランの伝統的な工芸品を作る手法であり、適度に耐久性のある材料でバスケットや容器を作るために行われてきました。

2019年7月23日のバワ生誕100周年記念イベントでの基調講演

那珂川町馬頭広重美術館
梼原町 x 隈研吾建築物
スターバックス太宰府天満宮表参道店
新国立競技場
など、隈研吾さんがこれまで取り組まれた建築について紹介された後に、ルヌガンガに設置された作品「KITHUL-AMI」について説明されています。

参照)

ばんせいグループの歩み
ばんせいグループホールディングス:会社概要
ウィキペディア:ばんせい証券
Club Villa Bentota公式ページ
SPA CEYLON(日本)公式ページ
Bansei Royal Resorts Hikkaduwa PLC:Annual Report 2018 / 2019
PAN ASIA BANL:T Igarashi
日刊工業新聞:インタビュー/ニューワールド証券・五十嵐 尚会長-急成長するスリランカ
Ramboda Falls Hotel
ウィキペディア:ランボダ
Market Screener:Deshabandu Tilak de Zoysa
Carson Cumberbatch PLC 公式ページ
Wikipedia:Carson Cumberbatch
ウィキペディア:パーゴラ
家具蔵:チェア(椅子)とスツールの違いとは?
ウィキペディア:アーガー・ハーン建築賞
エジプト・ルクソールで観光でおすすめ!偉大な建築家ハッサン・ファトヒーのつくった村
涙なしには語れない…!2020年を飾った建築界の出来事
TIME & STYLE 公式ページ
adaderanabiz:Japan’s Wakana to build US $8.4Mn boutique hotel in Ahungalla
隈研吾建築都市設計事務所:KITHUK-AMI
architechturephoto:隈研吾による、ジェフェリー・バワ生誕100周年記念にデザインされた、スリランカのパヴィリオン「KITHUL-AMI」の写真
那珂川町馬頭広重美術館
梼原町 x 隈研吾建築物
スターバックス太宰府天満宮表参道店
中村力也
塚原敬史

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