10月のポーヤデー「ヴァプ・ポーヤ」とは?

10月のポーヤデーはヴァプ・ポーヤ(Vap Poya)です。
2020年は10月30日(金)がヴァプ・ポーヤです。
本記事では、ヴァプ・ポーヤについて解説していきます。
目次
ヴァプ・ポーヤとは?
ブッタを産んだ麻耶夫人はブッタ出産後の7日後に亡くなり、忉利天(とうりてん)に住んだと言われています。
ヴァプ・ポーヤはブッタが天に昇り、摩耶夫人のために三蔵の一つ「論蔵」の説法を3ヶ月間に行い、説法が終わりブッタが天から戻ってきたことを祝う日です。
ブッタは7月のエサラ・ポーヤに説法を始め、10月のヴァプ・ポーヤに説法を終えますが、それはちょうど雨安居(インドの雨季)の始まりと終わりにあたります。
雨安居中は仏教僧は外出せずに寺に籠もって修行しますが、ヴァプ・ポーヤで雨安居が終わります。
2つ目の天「忉利天」とは?
ブッタの産みの母 摩耶夫人が住んだ忉利天について解説します。
仏教では、欲界・色界・無色界と三つの世界(三界)があるとしています。
欲界は地獄道、餓鬼道 、畜生道、修羅道、人道、天道と6つ(六道)に分かれます。
天道はさらに6つに分かれるため、六欲天ともいいます。
忉利天は六欲天の中の2つ目の天です。
天は快楽に満ちた苦しみのない世界ですが、天人は悟りを開いておらず、煩悩から解放されていません。
煩悩・輪廻から解放されると、涅槃に達します。
そこで、ブッタは忉利天にいる摩耶夫人のために説教を行ったのです。
ちなみに、日本三代夜景の一つ、神戸市六甲山地の摩耶山は、空海が忉利天上寺に摩耶夫人の像を安置したことに由来します。
6つに分かれた「六欲天」とは?
6つに分かれる天は以下のようになっています。
第1天が四天王が住む「四天王衆天」(須弥山の中腹)
第2天が帝釈天が住む「忉利天」
第3天が「夜摩天」
第4天が「兜率天」(内院と外院に分かれていて、内院には菩薩が住むとされる。須弥山の頂上)
第5天が「化楽天」
第6天が天魔が住む「他化自在天」(天道の最高位)
四天王は須弥山の中腹にある東西南北の四方を守る、東の持国天、南の増長天、西の広目天、北の多聞天(毘沙門天)の四神です。
四天王は忉利天に住む帝釈天に使えています。
四天王のそれぞれに2つずつ鬼神が仕えていて、多聞天に仕えているのが夜叉と羅刹で、ともにバリ島のケチャで演じられるラーマーヤナに登場するランカー島の王ラヴァナに仕えていたとされています。薬叉はスリランカ人の先住民族のヴェッダー人の祖先だとも言われています
多聞天の原名はヴァイシュ・ラヴァナで、「多く聞く者」の意味とされ、毘沙門は中国語での音写。
広目天の原名はヴィルー・パークシで、「千里眼のような不思議な力がある目を持つ者」と考えられています
増長天の原名はヴィルー・ダカで、「増大した者」の意味で、大きな力を持つ武神のこと。
持国天の原名はドゥリタラー・シュトラで、「国を支える者」という意味。
上杉謙信は武神「毘沙門天」をあつく信仰し、軍旗印に「毘」の字を使っていたこともで知られています。
6つに分かれる欲界(六道)
天道(六欲天)は6つに分かれる欲界の中に一つです。
欲界は6つに分かれており、六道と言われます。
六道はさらに、三悪趣と三善趣の2つに分けることができます。
人は死ぬと、この6つの道のどれかの道に行き、生まれ変わるとされています。
三悪趣
・地獄道
罪を償わせるための世界。
八熱地獄(等活地獄、黒縄地獄、衆合地獄、叫喚地獄、大叫喚地獄、焦熱地獄、大焦熱地獄、阿鼻地獄)
八寒地獄(頞部陀地獄、尼剌部陀地獄、頞哳吒地獄、臛臛婆地獄、虎虎婆地獄、嗢鉢羅地獄、鉢特摩地獄、摩訶鉢特摩地獄)
があります。
・餓鬼道
餓鬼と閻魔王が住む世界。
餓鬼は腹が膨れた姿の鬼で、食べ物を口に入れようとすると火となってしまい餓えと渇きに悩まされます。
餓鬼大将、クソ餓鬼の語源にあたります。
・畜生道
悪行の報いとして死後に生まれ変わる世界。
ほとんど本能ばかりで生きている人間以外の全ての動物が(鳥・獣・虫・魚など)住みます。
こん畜生の語源で、この畜生(人以外の獣)という罵りの言葉。
三善趣
・修羅道
終始戦い争う阿修羅が住む世界。
阿修羅は仏教の守護神であり、古代インドでは戦闘神。
帝釈天の逸話では復讐に燃える悪鬼になり、天道から追放されたしまいます。
修羅場の語源にあたります。
・人道
人間が住む世界。
四苦八苦に悩まされますが、楽しみもあります。
四苦とは「生」「老」「病」「死」、八苦とは愛別離苦(愛する者と別離する)、怨憎会苦(怨み憎んでいる者に会う)、求不得苦(求める物が得られない)、五蘊盛苦(五蘊とは肉体と精神。五蘊が思うままにならない)を加えて8つの苦しみ。
解脱して仏になることができる唯一の道です。
・天道
天人が住む世界。
天人は人間よりも優れた存在で、寿命は非常に長く、苦しみが少ない。しかし、煩悩から解放されておらず、解脱ができないとされています。
三蔵の「論蔵」とは?
三蔵とは、ブッタの死後にブッタの教えをまとめるために集まった500人の阿羅漢(五百羅漢)によってまとめられた仏典のことです。
三蔵は僧の規則・道徳・生活様式をまとめた「律蔵」、ブッタの説いた教えたをまとめた「経蔵」、律蔵と経蔵の解説書・注釈書である「論蔵」の3つからなります。
三蔵法師とはこの律蔵、経蔵、論蔵の三蔵に精通した法師(僧侶)のことです。
三蔵法師は尊称で固有名詞ではありません。
とはいえ、中国の伝奇小説『西遊記』に登場する人物「三蔵法師(玄奘三蔵)」が三蔵法師で最も有名なため、三蔵法師といえば、玄奘を指すことがあります。
他の代表的な三蔵法師は、最初の三蔵法師で、玄奘とともに二大訳聖と言われる「鳩摩羅什」がいます。
玄奘と鳩摩羅什に加えて、「真諦」、「不空金剛」の4名は四大訳経家とも呼ばれます。
まとめ
関連ページ
参照
Vap Poya
麻耶夫人
忉利天
六欲天
三界
色界
無色界
六道
餓鬼
四天王
八部鬼衆
摩耶山
忉利天上寺
天(仏教)
帝釈天
論蔵
三蔵
三蔵法師
玄奘三蔵
鳩摩羅什
阿毘達磨
三悪趣
地獄
日本文化研究ブログ「六道(天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道)の意味とは?
世田谷区瀬田の「慈眼寺」の四天王の解説

趣味の旅と町歩きを仕事にしたいと主にアジアを周り、2016年7月、24カ国目に訪れたスリランカで会社を設立することに。2017年2月、スリランカで日本語情報誌「スパイスアップ・スリランカ」を創刊し、2018年9月スリランカ観光・生活情報サイト「スパイスアップ」(当サイト)を開設。公式のインスタグラム、ツイッターのアカウント、ユーチューブチャンネルも運営していますが、つい趣味の個人のインスタ・フェイスブックアカウントを更新しがち。夕日を観るのが日課。
新着記事
-
『ZEN釈宗演 下 』日本人初の上座仏教徒・釈興然、スリランカのグネラ...
明治時代に世界を回った日本の仏教僧・釈宗演の半生を漫画した『ZEN 釈宗演』の下巻について内容を紹介していきます。 下巻はセイロン(現スリランカ)での滞在について描かれています。 帰路にシャム(タイ)に向かった際のエピソ…
2021年3月02日 -
2月のポーヤデー「ナワン・ポーヤ」コロンボ・ペラヘラとは?
2021年のナワン・ポーヤは2月26日です。 ナワン・ポーヤは2月のポーヤデー(満月祭)で、コロンボのガンガラーマ寺院ではペラヘラ(パレード)が開催されます。 本記事では、ナワン・ポーヤ、ナワン・ペラヘラについてご紹介し…
2021年2月24日 -
フランス流紅茶専門店「マリアージュフレール」とセイロンティー
1854年にフランスのパリで開業した紅茶ブランド「マリアージュフレール」。 本国フランスに次いで店舗数が多いのが日本で、500種類以上の紅茶を扱っています。 マリアージュフレールの代表的な紅茶は「マルコポーロ」。 マルコ…
2021年2月16日